中学校3年で「因数分解」について習います。
因数分解は前回の内容「乗法公式」から繋がっている内容ですが、さらにこのあとの単元「2次方程式」に繋がる重要な単元です。
ここでつまずくと今後にも影響するので、しっかり抑えましょう。
因数分解とは
『因数分解』とは数を複数の数の積で表すことといい、積で表した一つ一つの数を“因数”といいます。

たとえば「12を因数分解せよ」と言われれば、「12=2×2×3」や「12=4×3」「12=6×2」と答えます。
因数がすべて“素数”になるように、自然数を因数分解することを『素因数分解』といい、そのときの因数を『素因数』といいます。
例)
- \(12=2^{2}×3\)
- \(30=2×3×5\)
- \(36=2^{2}×3^{2}\)
中学校数学では文字を含む多項式の因数分解が非常に重要になります。
多項式の因数分解の手順
中学校数学の範囲では多項式の因数分解は以下の手順で行います。
- 最大の共通因数(すべての項に共通の因数)でくくる
- 乗法公式(展開公式)の逆を考える
1.最大の共通因数でくくる
多項式におけるすべての項に共通する因数を“共通因数”といい、もし共通因数があるなら、その最大の因数でくくります。
多項式の因数分解をする場合、「カッコ中は1以外の共通因数がない状態にする」という暗黙のルールがあるため、最大の因数で括る必要があるのです。
また、すべての項が負なら、「-1」も外に出します。言葉ではわかりにくいと思うので、実際に問題を解いてみましょう。
以下の式を因数分解せよ。
(1)\(6x+12\)
(2)\(-4x-24y\)
(3)\(2x^{2}y-4xy^{2}\)
(4)\(x(x-2)+4(x-2)\)
(1)\(「6x」\)と\(「12」\)の最大の共通因数\(「6」\)でくくると、
\(6x+12=6(x+2)\)
となります。
(2)\(「-4x」\)と\(「-24y」\)の最大の共通因数は「4」ですがともに負なので「-4」でくくると、
\(-4x-24y=-4(x+6y)\)
となります。
(3)\(「2x^{2}y」\)と\(「-4xy^{2}」\)の最大の共通因数\(「2xy」\)でくくると、
\(2x^{2}y-4xy^{2}=2xy(x-2y)\)
となります。
(4)少しむずかしいですが、\((x-2)\)を一つの塊として見ると、
\(x(x-2)+4(x-2)=(x+4)(x-2)\)
となります。
わかりにくければ\(x-2=A\)とおいてみましょう。
\(xA+4A=(x+4)A=(x+4)(x-2)\)
2.乗法公式の逆を考える
2次式の場合、各項の共通の因数に着目するだけでは因数分解できない場合があります。
たとえば
\(x^{2}+3x+2=(x+1)(x+2)\)
のような場合です。
これは乗法公式を逆にしたものです。

ここで一旦、乗法公式について復習しましょう。前回、以下の4つの乗法公式について解説しました。(スマホの場合、左右にスクロールできます)
- \((x+a)(x+b)=x^{2}+(a+b)x+ab\)
- \((x+1)(x+2)=x^{2}+3x+2\)
- \((x+2)(x-3)=x^{2}-x-6\)
- \((x+a)^{2}=x^{2}+2ax+a^{2}\)
- \((x+1)^2=x^{2}+2x+1\)
- \((x+2)^2=x^{2}+4x+4\)
- \((x-a)^{2}=x^{2}-2ax+a^{2}\)
- \((x-1)^2=x^{2}-2x+1\)
- \((x-2)^2=x^{2}-4x+4\)
- \((x+a)(x-a)=x^{2}-a^{2}\)
- \((x+1)(x-1)=x^{2}-1\)
- \((x+2)(x-2)=x^{2}-4\)
これらの公式は多項式同士の積を展開する際に役立ちましたが、これらを逆に考えて因数分解できるように、それぞれの形を覚える必要があるのです。
ただ覚えるといっても、2番目と3番目は1番目の特殊な型というだけなので、実際に覚えないといけないのは1番目と4番目を逆にした形、
\(x^{2}+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)\)
と
\(x^{2}-a^{2}=(x+a)(x-a)\)
だけです。
\(x\)の項がある場合は1~3番目のいずれかを用いますが、実際に解く際には以下のように考えます。
- 定数項の因数に注目
- 因数の和でxの項の係数になる組み合わせを考える
\(x^{2}+7x+12\)の場合。
まず定数項の「12」に注目して積が12になる組み合わせを考えると、(±1,±12)(±2,±6)(±3,±4)のマイナスの組も合わせて6通り。
このなかで(+3,+4)は和が7になるので、\(x^{2}+7x+12=(x+3)(x+4)\)となります。

乗法公式の2番目や3番目を使う場合も手順は変わりません。

4番目の乗法公式は一番簡単です。
\(x^{2}-a^{2}=(x+a)(x-a)\)
左辺の定数項の符号がマイナスになっていることに注目して、なにを2乗したかたらこの形になるのかを考えます。

また、\(x^{2}\)の係数が1じゃない場合もあるので、その場合は下のように因数分解しましょう。

3.応用問題(1と2の複合)
乗法公式の逆を利用して因数分解する手順を解説しましたが、あくまで最初の手順は共通因数でくくることを忘れてはいけません。
たとえば、\(2x^{2}-2x-12\)という場合はこのように因数分解をします。

多項式において「因数分解せよ」という問題は必ず以下の手順で解くことができます。
- 定数項の因数に注目
- 因数の和でxの項の係数になる組み合わせを考える
因数分解はこのあとの単元「2次方程式」に繋がる重要な内容なので、しっかり抑えましょう。